仕事で懐かしのあの街へ。
閑散とした私鉄で二年間住んだ街を過ぎ、四年住んだ街を過ぎた。
風景の方が俺にうったえて来た。
とたんに胸がきゅっと苦しくなって、ふるさとではないが、郷愁めいた感情に戸惑ってしまった。

電車は行き、次は友人が住んでいた街へ。
さらにその次の駅もまた別の友人が住んだ街だった。
そこで降りる。
仕事の用を手早く済ませ、俺はおもわずかつての友人のアパートに向かっていた。
なんとも懐かしい。
近隣の迷惑も顧みず通りでキャッチボールをした思い出が鮮明に蘇った。
彼の部屋でバイトをさぼってまでゲームをし、語り明かしたことも幾度とある。

帰りの電車では焼き付けるように学生時代の住まいを眺めた。
あの部屋で生まれた曲もマニッシュのレパートリーにある。
あの頃からずっと歌い続けてきた。
いろいろなことが変わってしまったが、今もまったく変わらない情熱を生々しく確認していた。

俺は過去に並々ならぬ郷愁を抱く人間だが、電車はけたたましく千葉から東京に俺を運ぶ。

俺は今、闘いの舞台に身を置いて、悪くない日々を送っている。
昔の俺に少しだけ自慢してあげられるような、そんな日々ではなかろうか。

懐古主義甚だしく。

かずゆき