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クリニックの日記

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2017/09/25(月)
「笑みに見た底力」

 出勤する朝だった。玄関を開けると彼岸花が咲き始めていた。我が家の彼岸花は黄色だ。「行ってきます」と心の中で声をかけた。
あったあった、いつものように百枝の辺りの道端や畦道にも、真っ赤な彼岸花が整列していた。彼岸花を見ていると、「指先の芸術」と言われるタイ舞踊が浮かぶ。彼岸花の細い花弁が撓っている姿に、タイ舞踊の手の動きのえも言われぬ艶めかしさや神秘さが漂っているように感じるのだ。台風18号の通り過ぎた後で、雨上がりの朝だったので、一層妖艶な雰囲気の花の列だった。
  群青の空はろばろと彼岸花 明寛
 この日は、「台風の被害は?」の声かけで
診療を始めた。「いや何も・・」と聞くとホッとした。でもある老い人は「大豆が全滅でした・・砂や石ころが田を埋めた」とぽつりと話した。ある壮年の方は「いやー稲が流された・・・後には板切れやゴミが田にいっぱい・・・電柵も流されてしまった・・・大赤字です」と語った。
私は「そうですか、大変でしたね」と言ったが、自分の言葉が空しく感じた。今年はこの地域には天災がなく、稲も穂を垂れ豊作の感じがあったので喜んでいたのに・・大雨は冷酷にも作物を苛め人を打ちのめした。
しかし私は救われた。「農家は大変です・・何年か前にもあった。ボチボチやります」との言葉が続いた。この時に口元に笑みがあったのだ。
私はこの笑みを見た時に、ホッとした。そして農家の方の底力を感じ、「強い!」と感動し敬服した。同時に十数年前、腰痛で苦しんでいた老女を思い出した。その方に「年取ってからの農作業は大変だね」と労いの声かけたら「先生、百姓百品、退職金は神経痛じゃ」と日焼けした皺いっぱいの顔で笑いとばしたのだ。この媼は「百姓とは百にものぼるたくさんの品(農作物)を作ることのできる人」と理解し誇りを持っていたのだった。
百姓の語源は別にあると知っていたが、私はこの媼の「百姓は百品作れる職能人」という解釈が妙に腑に落ち、今は「そうだ、その方が良い」と納得している。
話は戻るが、水害の苦況にありながら、笑みを浮かべた農家の方々に、「負けないで生きていく!」という決意が見えたのだ。
動物学者によると、笑いの表情ができるのは、ヒトとサルだけだそうだ。笑う動作は、口に入った有害なものを吐き出そうとする動作が起源であり、その後に親しみを表すことになっていった。最近笑いは、免疫力向上、健康増進にも効果があると言われている。このように、笑うことは身体だけでなく精神の健康(衝撃や挫折からの心の立ち直り)にも、影響を及ぼすことが分かっている。私が水害に会われた方々に笑みを見て安堵した理由は、この方々はきっとこの困難を乗り切るという確信を持ったからだ。「頑張って欲しい!」私はそう願って診察を始めた。
ところで、笑いというとユーモアという言葉が浮かぶ。日本人はユーモアの不得意な民族と言われる。政治家の発言も固い内容が多く、たまに笑えると思ったら、嘲笑する内容が多い。ユーモアの豊かな国民と言えば英国となっている。私は時々英国の紳士淑女のユーモア話を読みながら、明日への英気?を養っている。皆様にも一つユーモア話をご紹介しましょう。笑ってもらえたらいいのですが。
“無人島に男二人と女一人が漂着した。男達がイタリア人なら殺し合い、生き残った男が女を愛する。もしフランス人なら一人は夫、一人は愛人となってうまくやる。イギリス人だったら紹介されるまで口をきかないくらいだから、何も問題は起こらない。日本人なら、すぐ東京の本社に電話をかけ、どうしたらいいか問い合わせる。”国民性が分かりますね。
笑いは健康の元、一日一回は笑おう!。
(清川診療所 坪山明寛)

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