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2010/12/31(金)
「『行く年来る年もまた』2」
しばらく、そうしていると遊星の携帯が鳴る。
「遊星、電話が!」
「あ、ああ。」
遊星は、少し寂しそうな顔で名残惜しそうにブルーノの手を離すと、無機質な声で電話に出た。
「はい。…修理?ええ、分かりました。お引き受けします。そ…う…ですね。はい。1時間くらいで。」
ピッ。と、通話を切る音がして。遊星がまくっていた袖を戻し、皮手袋を手に取った。
「遊星、仕事?僕も行くよ。」
「だが、掃除がまだ終わっていない。ブルーノまで出てしまったら、クロウが困る。」
大振りのスパナやトルクレンチを手に取り、引き出しからいくつかのパーツを取り出すと工具箱の中に追加すると、キッチンを掃除しているであろうクロウの元へと駆けていく。
しばらくして戻ってくると、遊星はブルーノの前で足を止めて彼を見上げた。
「…一緒に行けといわれた。」
「うん。」
クロウのことだから、そう言うことが分かっていたブルーノは満面の笑みで頷くと、電動工具が入って重たくなった工具箱をヒョイと持ち。同じ手にヘルメットを抱えた。
「じゃあ、行こうか?」
空けた片腕は、遊星に向かって伸ばす。
ブルーノは、常時装備の遊星専用スマイルで、皮手袋に包まれた遊星の腕を引いた。
「あ、ブルーノ!」
いつも当たり前のように、工具箱を持ちこうして遊星をエスコートするようにしてくれるブルーノの姿も今年は見納め。
この仕事を仕事納めにしようと心に決めた遊星は、その手を取る。
「この仕事で、仕事納めだ。」
「OK!じゃあ、気合を入れないとね。」
遊星の手を引いて、ブルーノはDホイールの前まで遊星をつれてくると、機嫌よさそうにその前に立った。
「綺麗になったでしょ。」
「俺のDホイールまで、磨いてくれたのか・・・。」
「うん、3台ともね。」
いい仕事をした。と、満足げな顔には書いてある。
その表情を崩してやりたくなって、遊星は手ぶらなのをいいことに、不意打ちでブルーノのジャケットを掴むと力を込めて
その上背を引きおろす。
「えっ?」
急に引き下げられた視線と唇と掠めるように、遊星の唇が羽のように触れて、いたずらっぽく笑った青が残像を残し過ぎ去った。
ブルーノが、正気に戻ったときには遊星はスターターを蹴っており、恥ずかしさをごまかすように高回転域のエンジン音を響かせて
先に行ってしまう。
「ゆ、ゆ、遊星ぇ。待ってよ〜。」
赤くなった頬を隠すように、ヘルメットをかぶると工具箱を積み遊星を追いかける。ナビにシグナルが映り、途中で待ってくれて
いることを知るとふっと口元を緩める。
「…きっと、来年もこうして君といられると信じるよ。ううん、こうして君といる。…そう、決めた。」
ブルーノの目が強気な光を宿すと、スピードを上げた。
速度を緩めていた遊星に併走するとブルーノは、途中になっていた先ほどの会話を再開する。
「ねえ、遊星。ご褒美って何?」
「…それは、できたらの話だ。あと6時間ほどある。」
「6時間か…。あまり自信はないけど、頑張るよ。」
少し自信なさげに、苦笑いするブルーノに遊星は微笑む。
「ブルーノ。」
「なぁに?」
「来年もよろしくな。」
「僕の方こそ。」
願わくば、このまま君と平和な時間が少しでも長く過ごせますように。
二人は、スピードを上げると海岸線のカーブをかわして今年最後の仕事に向かった。
行く年編 END
「遊星、電話が!」
「あ、ああ。」
遊星は、少し寂しそうな顔で名残惜しそうにブルーノの手を離すと、無機質な声で電話に出た。
「はい。…修理?ええ、分かりました。お引き受けします。そ…う…ですね。はい。1時間くらいで。」
ピッ。と、通話を切る音がして。遊星がまくっていた袖を戻し、皮手袋を手に取った。
「遊星、仕事?僕も行くよ。」
「だが、掃除がまだ終わっていない。ブルーノまで出てしまったら、クロウが困る。」
大振りのスパナやトルクレンチを手に取り、引き出しからいくつかのパーツを取り出すと工具箱の中に追加すると、キッチンを掃除しているであろうクロウの元へと駆けていく。
しばらくして戻ってくると、遊星はブルーノの前で足を止めて彼を見上げた。
「…一緒に行けといわれた。」
「うん。」
クロウのことだから、そう言うことが分かっていたブルーノは満面の笑みで頷くと、電動工具が入って重たくなった工具箱をヒョイと持ち。同じ手にヘルメットを抱えた。
「じゃあ、行こうか?」
空けた片腕は、遊星に向かって伸ばす。
ブルーノは、常時装備の遊星専用スマイルで、皮手袋に包まれた遊星の腕を引いた。
「あ、ブルーノ!」
いつも当たり前のように、工具箱を持ちこうして遊星をエスコートするようにしてくれるブルーノの姿も今年は見納め。
この仕事を仕事納めにしようと心に決めた遊星は、その手を取る。
「この仕事で、仕事納めだ。」
「OK!じゃあ、気合を入れないとね。」
遊星の手を引いて、ブルーノはDホイールの前まで遊星をつれてくると、機嫌よさそうにその前に立った。
「綺麗になったでしょ。」
「俺のDホイールまで、磨いてくれたのか・・・。」
「うん、3台ともね。」
いい仕事をした。と、満足げな顔には書いてある。
その表情を崩してやりたくなって、遊星は手ぶらなのをいいことに、不意打ちでブルーノのジャケットを掴むと力を込めて
その上背を引きおろす。
「えっ?」
急に引き下げられた視線と唇と掠めるように、遊星の唇が羽のように触れて、いたずらっぽく笑った青が残像を残し過ぎ去った。
ブルーノが、正気に戻ったときには遊星はスターターを蹴っており、恥ずかしさをごまかすように高回転域のエンジン音を響かせて
先に行ってしまう。
「ゆ、ゆ、遊星ぇ。待ってよ〜。」
赤くなった頬を隠すように、ヘルメットをかぶると工具箱を積み遊星を追いかける。ナビにシグナルが映り、途中で待ってくれて
いることを知るとふっと口元を緩める。
「…きっと、来年もこうして君といられると信じるよ。ううん、こうして君といる。…そう、決めた。」
ブルーノの目が強気な光を宿すと、スピードを上げた。
速度を緩めていた遊星に併走するとブルーノは、途中になっていた先ほどの会話を再開する。
「ねえ、遊星。ご褒美って何?」
「…それは、できたらの話だ。あと6時間ほどある。」
「6時間か…。あまり自信はないけど、頑張るよ。」
少し自信なさげに、苦笑いするブルーノに遊星は微笑む。
「ブルーノ。」
「なぁに?」
「来年もよろしくな。」
「僕の方こそ。」
願わくば、このまま君と平和な時間が少しでも長く過ごせますように。
二人は、スピードを上げると海岸線のカーブをかわして今年最後の仕事に向かった。
行く年編 END