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kasugadotsuboの日記

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2010/11/21(日)
「ブル遊でイイフウフの日(1)」

 『11・22の日』

 クロウの宅配便は、評判もよくシティ近隣の特急対応などにはとくに重宝されている。

ただ、ごくたまに遠方への依頼が舞い込むこともある。

「…で!これ、受けちまったのか!」
「すまない、伝票の住所をしっかり見ていなかった。」
クロウが不在の時に、運び込まれた荷物を受けたのが、たまたま遊星で
クロウに教えられたように伝票を記入し、荷物の確認をしたのだが、いささか遠すぎる。

 しかも、整備の片手間に受けたものだから遊星も気が散っていたらしい。
「はぁ〜、シティの郊外か・・・。1日じゃ往復できねぇな。仕方ねぇ、どっか別のところに委託するか。」
「それはダメだ。この送り主は、クロウの評判を聞いて大切に届けてほしいから選んだと言っていた。」
遊星の話によると、おばあさんが、遠く離れた息子のところに送りたいといって持ってきた荷物らしい。

「くあぁ、そういう話聞いちまうと俺、ダメだ…。けどよ、いつものお客は、ないがしろにできねぇ。」
クロウが、腕を組んで唸っていると、遊星がハンディモバイルで地図を呼び出し住所を入力して何かを確認していた。

「どうした、遊星?」
「クロウ。俺が、行ってくる。整備は今日中に終わらせておく、明日の早朝出ればデュエルレーンを走らなくても制限速度維持で、
昼までには着ける。」

そりゃ、ジャックに任せるより、遊星ならば確実だろう。

多少無愛想だが、礼儀正しいしお客の信用という面では問題ない。
だが、
「ダメだ。却下!お前の個人行動は、危ないからダメ!こんな俺らの目の届かないとこまで行って、誘拐でもされたらどうするんだ!」

周囲に対しては警戒心が強くとも、他人の危機が関わると遊星は途端に無防備になる。

前回、誘拐されたときは、その能力を狙って洗脳までされるところだった。

「誘拐…?そんなことされたか?」
「おーまーえーなー!十六夜呼ぶぞ!!」
遊星の天然っぷりに、クロウは仰け反った。

だいたい、整備の仕事だって建前をつけてブルーノについていくよう頼んでいるのは、そばに仲間がいるのといないのでは、
遊星の警戒心が違うからだ。自然と仲間を守ろうとする気質が、遊星自身をも守ることになる。

それに、そばに199cmの大男がいれば近寄りがたいだろうし、ブルーノは、遊星を大切にしているから何があっても遊星を守るだろう。
同じ、遊星を大事にしているでも、ジャックの場合は、後々クロウに降りかかる二次災害を予測せねばならない。

おまけに、整備要員にもなれるとなれば倍の仕事を請けられるため一石二鳥なのだ。
そのあたり、クロウの算盤に抜かりはない。
「とにかく、遊星はダメだ。一人だったら、なお却下。」

何故そこまで、クロウに反対されるのか納得が行かないまま、遊星は、どうにかクロウを説得する方法を考える。

そこへ、ブルーノが上がってきた。

「あ、遊星!いたいた。あのね、明日なんだけど、ちょっと出てきていいかな?システムメンテナンスの仕事請けてきたんだ。
ちょっと遠いから、1日空けることになっちゃうけど…。ってどうしたの?」
腕組をしてそっぽを向いているクロウと、困り顔の遊星を見比べてブルーノが、遊星の顔をまじまじと見た。

「あ、いや。遠いってどこまで行くんだ?」
「うん、ちょっと山のほうかな。電波状況もよくないみたいだから、そっちいじってると、もう1日かかるかもしれない。」
言いながら、ハンディモバイルで地図を出すと遊星に見せた。

赤い光が指す点は、遊星が出した地図とほぼ同じ位置。
「ここは…。ブルーノ、俺も行く。」
「え?」
遊星遊星も地図を出して、ブルーノの地図と重ね合わせると、やはり同じ位置に点が重なった。

「クロウ、それならいいだろう?俺一人じゃない、ブルーノと一緒だ。」
遊星は、ブルーノの腕を引いてクロウの前に引き出した。

「え、遊星?ええっ、何のこと?僕と一緒ってならいいって?」

これまでのいきさつを知らないブルーノは、状況が読めずに焦っていた。

クロウは、ブルーノの地図と遊星の地図を照らし合わせて確認すると、しぶしぶ了解を出す。

「ブルーノが一緒ならまだ…。ブルーノ、遊星から目を離すんじゃねぇぞ。」
「子供じゃないんだが…。」
クロウの心配振りに、遊星は苦笑する。

(行動力と無駄に高い能力がある分、ある意味ガキより危険だぜ。)
(遊星は、集中すると周りが見えなくなるからね。自分のことは二の次だし。)

ボソボソと話すブルーノとクロウの横で遊星は、Dホイールのカーゴに荷物が入るか確認している。

(目ぇ離すなよ。)
(大丈夫だよ。離れないから♪)


「じゃあ、明日は6時出発で間に合うか?それまでに、皆のセッティングをある程度固めておきたい。」
「あ、僕も手伝うよ。今日は早く寝ないとね。」

遊星を追いかけて下りていったブルーノを見送りながら一抹の不安に襲われるクロウであった。


つづく!

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