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2010/10/04(月)
「TF5 ジャックのハート3つ目より(2)」
<2>
当然、デュエルはタッグ方式。
警戒するべきは、奴らの機皇帝。あれを呼ばれたらシンクロ召喚は、タブー。
幾分か、機皇帝と戦い慣れている相棒のサポートもあり、いつも通りのデュエルで押し切る。
機皇帝の出現を効率的に防ぐという戦略を主軸に、互いの伏せカードやモンスター効果を駆使して確実に封じ、
機皇帝のコアを除外した隙を見てセイヴァーデモンドラゴンを召喚する。
場に残された、機皇帝のパーツは守備表示だ。おまけに、モンスター効果を無効にするパーツは残っていない。
「むう…この状態で、このドラゴンは。」
「ちょっと、聞いてないし!アンタがヘマするからだよ!」
「遊星を傷つけておいて、この俺から逃れられると思うな!」
セイヴァーデモンドラゴンは、守備表示のモンスターをすべて破壊し、エンドフェイズ時にレッドデーモンズドラゴンが帰ってくる。
大嵐によって、こちらのマジックトラップは一掃されたが、相手は手詰まり。
「無暗にシティを混乱に陥れ、多くのデュエリストを傷つけた貴様らの所業、万死に値する。喰らうがいい!アブソリュート パワーフォース!!」
無防備のフィールドにダイレクトアタック、おまけにハンドレスでは防ぎようもない。
甲高い声のチビが、遊星に対して呪いがどうのとほざいていたが。所詮は負け犬の遠吠え。聞く価値などありはしない。
奴らが去り際の台詞もそこそこに聞き、遊星を抱き起こす。
「遊星、遊星!」
「うっ…、ジャック。」
至近距離で顔を覗き込めば、隠されていた青い宝玉が姿を現す。
意外としっかりとしている視線に、ホッとする。
「気がついたか。」
「…ああ。イリアステルは?」
安堵したのも束の間、二言目には状況把握。軍人でもあるまいに、遊星の性格では己の身体より優先される。
それに憤りながらも、ジャックは、遊星に合わせて淡々と説明してやる。
「倒した。いったん引いたというのが正しいのかも知れんがな。とにかく、ひと段落だろう。」
「…そうか。ジャックは、怪我はないか。」
安堵のため息が、唯一人らしい感情を伝えてきた。
そして、起き上がれないほど消耗しているのに、仲間を心配する。
「無傷だ。当然だろう。」
<そう、俺は、どんな状況でも遊星を安堵させる存在で無ければならない。>
ジャックが、いつもの笑みを浮かべれば、遊星もつられて表情を緩めた。
「フフ。そ…だな。くっ。」
「無理に起き上がるな、じっとしていろ。」
言うが早いか、ジャックは横たわっていた遊星のひざ裏と背中を支えると、軽々と抱き上げる。
急に襲った浮遊感に、遊星は何が起こったのか一瞬、把握する事が出来なかった。
「…体重が軽過ぎる。これでは、爆風には耐えられんな。」
何かあった時は、自分かブルーノあたりが盾になってやらねばと、一人考えるジャックだった。
「ジャ…ジャック。降ろしてくれ、こんな。」
「暴れると傷に触る。信用しろ、他ならぬお前を落したりはせん。」
「そういう問題じゃ…。」
「遊星ーーー!ジャックーーー!無事かーーーーーー!!」
セキュリティのパトロールカーをまわして来た牛尾が、大声で叫びながら窓から手を振っていた。
まだ遠めだが、牛尾の目から見ても、ジャックが遊星を抱えているのが見える。
「牛尾だな。丁度いい、このまま病院へ連れて行ってもらおう。」
「やっぱり降ろせ、こんな格好恥ずかしい。っく、痛っ。」
デュエルディスクを装着している分、重さの負担が掛り衝撃を受ければそちらの腕を傷めやすい。
もっとも、プラシドの攻撃はその程度のものではなかったが。
「暴れるなと言っている!」
抱き上げたまま、耳元に唇を寄せてジャックは、囁いた。
「正直、俺も肝が冷えた…。お前が一人で戦っていると牛尾に聞いて…駆けつければ、満身創痍で
何とか勝ったような状態。相手の自爆にも巻き込まれる所だったな…。さらに、もう二人の刺客。もしも、
間にあわなければ…俺は、一生自分を許せなくなるところだった。」
タッグで援護してくれた相棒は、とっくの昔に、軽く手を振るとその場を去っていた。
おそらく牛尾を呼んだのは奴だろう。
流石に、遊星のタッグパートナーを務めただけの事はある。人間関係の把握と、遊星の性格も、ある程度掴んでいるようだ。
「遊星…。」
その存在を確かめたくて、背中に回していた腕に力を込めて強めに抱き寄せると、遊星の手が胸板を軽く押し返した。
「……ジャック。俺には、ジャックにこうしてもらう資格なんてない。俺は…、俺には…。」
表情を隠すように俯くと、遊星は、何かを耐えるように身体を震わせていた。
つづく
当然、デュエルはタッグ方式。
警戒するべきは、奴らの機皇帝。あれを呼ばれたらシンクロ召喚は、タブー。
幾分か、機皇帝と戦い慣れている相棒のサポートもあり、いつも通りのデュエルで押し切る。
機皇帝の出現を効率的に防ぐという戦略を主軸に、互いの伏せカードやモンスター効果を駆使して確実に封じ、
機皇帝のコアを除外した隙を見てセイヴァーデモンドラゴンを召喚する。
場に残された、機皇帝のパーツは守備表示だ。おまけに、モンスター効果を無効にするパーツは残っていない。
「むう…この状態で、このドラゴンは。」
「ちょっと、聞いてないし!アンタがヘマするからだよ!」
「遊星を傷つけておいて、この俺から逃れられると思うな!」
セイヴァーデモンドラゴンは、守備表示のモンスターをすべて破壊し、エンドフェイズ時にレッドデーモンズドラゴンが帰ってくる。
大嵐によって、こちらのマジックトラップは一掃されたが、相手は手詰まり。
「無暗にシティを混乱に陥れ、多くのデュエリストを傷つけた貴様らの所業、万死に値する。喰らうがいい!アブソリュート パワーフォース!!」
無防備のフィールドにダイレクトアタック、おまけにハンドレスでは防ぎようもない。
甲高い声のチビが、遊星に対して呪いがどうのとほざいていたが。所詮は負け犬の遠吠え。聞く価値などありはしない。
奴らが去り際の台詞もそこそこに聞き、遊星を抱き起こす。
「遊星、遊星!」
「うっ…、ジャック。」
至近距離で顔を覗き込めば、隠されていた青い宝玉が姿を現す。
意外としっかりとしている視線に、ホッとする。
「気がついたか。」
「…ああ。イリアステルは?」
安堵したのも束の間、二言目には状況把握。軍人でもあるまいに、遊星の性格では己の身体より優先される。
それに憤りながらも、ジャックは、遊星に合わせて淡々と説明してやる。
「倒した。いったん引いたというのが正しいのかも知れんがな。とにかく、ひと段落だろう。」
「…そうか。ジャックは、怪我はないか。」
安堵のため息が、唯一人らしい感情を伝えてきた。
そして、起き上がれないほど消耗しているのに、仲間を心配する。
「無傷だ。当然だろう。」
<そう、俺は、どんな状況でも遊星を安堵させる存在で無ければならない。>
ジャックが、いつもの笑みを浮かべれば、遊星もつられて表情を緩めた。
「フフ。そ…だな。くっ。」
「無理に起き上がるな、じっとしていろ。」
言うが早いか、ジャックは横たわっていた遊星のひざ裏と背中を支えると、軽々と抱き上げる。
急に襲った浮遊感に、遊星は何が起こったのか一瞬、把握する事が出来なかった。
「…体重が軽過ぎる。これでは、爆風には耐えられんな。」
何かあった時は、自分かブルーノあたりが盾になってやらねばと、一人考えるジャックだった。
「ジャ…ジャック。降ろしてくれ、こんな。」
「暴れると傷に触る。信用しろ、他ならぬお前を落したりはせん。」
「そういう問題じゃ…。」
「遊星ーーー!ジャックーーー!無事かーーーーーー!!」
セキュリティのパトロールカーをまわして来た牛尾が、大声で叫びながら窓から手を振っていた。
まだ遠めだが、牛尾の目から見ても、ジャックが遊星を抱えているのが見える。
「牛尾だな。丁度いい、このまま病院へ連れて行ってもらおう。」
「やっぱり降ろせ、こんな格好恥ずかしい。っく、痛っ。」
デュエルディスクを装着している分、重さの負担が掛り衝撃を受ければそちらの腕を傷めやすい。
もっとも、プラシドの攻撃はその程度のものではなかったが。
「暴れるなと言っている!」
抱き上げたまま、耳元に唇を寄せてジャックは、囁いた。
「正直、俺も肝が冷えた…。お前が一人で戦っていると牛尾に聞いて…駆けつければ、満身創痍で
何とか勝ったような状態。相手の自爆にも巻き込まれる所だったな…。さらに、もう二人の刺客。もしも、
間にあわなければ…俺は、一生自分を許せなくなるところだった。」
タッグで援護してくれた相棒は、とっくの昔に、軽く手を振るとその場を去っていた。
おそらく牛尾を呼んだのは奴だろう。
流石に、遊星のタッグパートナーを務めただけの事はある。人間関係の把握と、遊星の性格も、ある程度掴んでいるようだ。
「遊星…。」
その存在を確かめたくて、背中に回していた腕に力を込めて強めに抱き寄せると、遊星の手が胸板を軽く押し返した。
「……ジャック。俺には、ジャックにこうしてもらう資格なんてない。俺は…、俺には…。」
表情を隠すように俯くと、遊星は、何かを耐えるように身体を震わせていた。
つづく