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kasugadotsuboの日記

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2010/09/23(木)
「遊星にゃん第3話-1」

雷が怖い遊星にゃん 3-1 

アクセル兄さん編

「こんな日に呼び出して、用件は何だ。」
ブルーノは、雨風の吹きこまないハイウェイの高架下にアクセルを呼び出していた。
「僕が兄さんを呼び出す用件は、一つしかないでしょう。」
雨合羽の前を開けるとジャケットの内ポケットから、ハンカチに包まれた遊星にゃんを取り出した。
「ちょっと色々あってね、熱があるんだ。放っておけないんだけど、遊星の仕事を放り出すわけにもいかないから。…信用できる人に預けたくて。」
遊星が請け負っている修理の仕事を代打で受けられるのは、ブルーノしかいないのだ。
クロウは、配達に忙しいし、ジャックも珍しくセキュリティの課長と出かけている。遊星が熱を出した原因は、慣れない女性体験と乱舞していた雷のせいだ。

「MIDSに預ければ、そのまま返してもらえなくなるか…。」
アクセルは、ライディンググローブを外すと、小さなネコを受け取る。大判のハンカチ越しにも、熱が伝わってきて、アクセルはサングラスの下の表情を厳しくした。
「獣医に見せるわけにもいかないでしょう。だって、元々は遊星なんだもの。だから、早く元に戻して様子を見てて欲しくて。」
冷たいアクセルの手が気持ちいいのか、遊星にゃんは、アクセルの指に頬を寄せてぴたりとくっついてくる。
「…いいだろう。先程、雷の根源は、消し去ったからな。私が預かろう。」
ライダースーツの前を開けて懐に遊星にゃんを入れると苦しくない程度にファスナーを締める。
「え、消し去った…って、じゃああれはやっぱり。」
「自然現象ではない、プラシドだ。高速で追いこんで、海に叩き落しておいた…。」
「デュエルじゃなかったんだ…。」
「スピード勝負だな。とにかく、私が預かる以上、心配はいらない。」
デルタイーグルでターンバックをかけると、元来た道を引き返して行った。

「これで、安心と。あ!でも大きくなったら、どうやって迎えに行こう。」
そんなことを考えながら、遊星の修理業を代行するブルーノだった。

独身男のワンルームには、それほど凝った物は置かれていない。黒に近いネイビーのテーブルの上には、ノートパソコンが1台。作りつけの棚の上にはヘルメットと予備のサングラスと携帯電話。あとは、クローゼットに服が何着か…と、小ざっぱりしたものだ。
 が、しかしベッドの傍には不釣り合いなほど可愛らしい籠に、ふわふわしたクッションが敷き詰められている。
 ふわふわクッションの上に遊星にゃんを寝かせると、急いでラフなシャツとパンツに着替えた。簡易キッチンでミルクを温めて戻ってこれば、ふわふわクッションに埋もれながら起き上がった遊星にゃんがいた。

「気分はどうだ、寒くは無いか?」
ブルーノより少し張りのある声。似ているけれど違う匂い。顔は、ほとんど同じなのに…。

ボーッとする頭は、いつもより回転が悪く身体にも力が入らない。
人間用の冷却シートを小さく切って額に貼ってもらったものの、居心地のいい筈のクッションよりも温もりが恋しかった。

そこへ、遠くで雷の音がする。
ピッと耳を倒すと、勝手に身体が震えだし、人間の時には感じない恐怖心に襲われる。
震えていることを気付かれないように、クッションへと身体を沈めてブルーノの匂いのするハンカチを被った。

「ふむ…あれは、自然の雷だな。」
アクセルは、つぶやくとハンカチを被って隠れていた、遊星にゃんを両手で掬い上げるように持ち上げると、懐に抱いてくれる。

「全く…ネコになっても変わらんのだな。怖いのなら、怖いと言っていい。ましてや、今は、本能まで書きかえられていて、どうにもならないのだから。」

アクセル独得の触り方が、遊星に安心感をもたらす。頭がボーっとするのは変わらないが、安心したらお腹が鳴った。

「…。」

つづく

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