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kasugadotsuboの日記

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2010/09/14(火)
「『Lost memories...』<新章><1>-2b」

『Lost memories...』<新章><1>-2b

先ほど空間に現れていたスターダストは、消えてしまっている。
星屑さえ残っていないことが気になったが、遊星は暗闇を見据えた。

「もう一度、呼ぶ。ここなら、負担は無いから大丈夫だ。」
遊星は、再び簡易の祭壇に上がると、同じようにしてスターダストを呼んでみた。

「???…スターダスト!!スターダストドラゴン!!」
暗闇が広がる空間には、遊星の声が響くばかりで、スターダストドラゴンは姿を現さない。
「っ…何故。何故なんだ!答えてくれ、スターダストドラゴン!!」

気配は感じる。でも姿は、現わさない。

「…ならばっ!!…集いし願いが、新たに輝く…。」
姿が見えない。それに遊星は気を逸らせる。
「「遊星!!ダメだ!!」」
召喚魔法陣を展開し、詠唱を始めた遊星をブルーノとダークグラスは、腕づくで止めた。
ダークグラスが、遊星を羽交い締めにして祭壇から降ろし、ブルーノが遊星の口をふさぐ。

「んんっ…。」
「駄目だよ。ここでそんな召喚魔法陣なんて使ったら…そこまでは、回復してない。」
「どうした、何故そんなに取り乱している。スターダストの気配は、ちゃんとある…。見えるものだけが全てではない!落ちつけ!!」

口をふさぐブルーノの手を振うと、遊星は、二人の手から逃れようとする。

「落ち着いて遊星!大丈夫だから。」
「だがっ!」
「余計な体力を使うんじゃない、冷静になれ!お前とて、解っているだろう。」
ダークグラスの言葉に、痛いところを突かれた遊星は言葉に詰まるが、観念したように身体の力を抜いた。
冷たい大理石の上に座らせるわけにはいかないと、ブルーノが、遊星を膝の上に抱えて地面に座り、ダークグラスは片膝を立てて、その傍についている。

「ブルーノ…。」
「うん。なあに、遊星。」
遊星は、目を閉じて落ち着きを取り戻そうとしている。
一つの手段が、遊星の脳裏には浮かんでいた。

「手を…。」
「こう?」
何とは言われなくとも、ブルーノは遊星の右手をそっと握る。

「…ダークグラス。いいか?」
「いいだろう。」
ダークグラスは、グローブをはずして左手を取った。

「あ、やっぱり外すんだ。」

いちいち、遊星に触れるときは手袋を外す分身も、遊星の波長をつかめるようになってきたのだと、ブルーノは微笑んだ。

「ああ、遊星がやろうとしていることが、解ったからな。」

 遊星も、自分が万全ではない事は解っている。屋上で掛けてもらったマントの付与魔法のような微量の魔力を未だ感じ取れないままなのだ。
 それには、流石におかしいと思い始めていたが、先ほどのダークグラスの話で謎が解けた。
 今、自分の中では、己の魔力同士が干渉しあって、探知能力を邪魔しているという状態なのだ。ということは、魔力を帯びた星屑に霧散しているスターダストドラゴンを捕まえるならば、氷の殻を突きぬける魔力を媒体にすればいい…。

その力を持つものが、傍に二人もいる。

それに、本来の自分ならば、天空を走る流星でさえ、落ちる前に見つけ出せるのだから。


「遊星、思うままに力を使っていいよ。僕が、制御するから。」
「…ならば心配はいらないな。私も遠慮せず力を貸そう。」


 遊星が集中しているのは、無理の無いように、ゆっくりゆっくり魔力の網を張り巡らせる為だ。

神殿内を細かな網の目のように張り巡らせた魔力が、天体の数ほど繊細な方眼を描いていく。神殿の全てにそれが行き渡ったとき、遊星は目を開いた。

とある座標に、確かな魔力の固まりがある。

 それを捉えた瞬間、投網を引くかのように一気に魔力の網を引き寄せた。

一番近い柱から3本の後ろ柱で、何かが慌てて逃げ出そうとし、網に引っ掛かったのかステンと、ひっくり返る音がした。

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