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kasugadotsuboの日記

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2010/09/13(月)
「『Lost memories...』<新章><1>-2a」

『Lost memories...』<新章><1>-2

数分後…。純白の大理石でできた神殿の前に、遊星は、立っていた。

腕にあるドラゴンヘッドが光を帯びて、その手でスターダストドラゴンのレリーフに触れれば、遊星の身体は、大理石をすり抜けていく。

ブルーノとダークグラスは、遊星が中から開いた空間を通って神殿内へと入った。

 3人分の足音が響きわたる静まり返った空間は、徐々に闇を濃くしていく。
5分ほど歩いた頃ふと遊星が立ち止まり、気を整えてから1段上の位置にある段差に上った。

 すると、段差が青い輝きを放ち、空間に星屑が舞い散る。


「スターダストドラゴン…。」

まるで慈しむかのように、守護竜の名を呼ぶ声は、ブルーノの記憶にもダークグラスの記憶にも鮮やかな遊星の声。

いつの時代の、どの遊星も…。
同じ声に同じ想いを込めて、守護竜を大切にしていた。

 遊星が魔力を少しずつ解放していくと、舞い散っていた星屑が集まり、白銀の竜の姿をとる。実体化したスターダストドラゴンは、遊星をいたわるように一吠えすると、遊星と念話をし始めたようだった。

「待たせてすまなかったな。…俺も、もう大丈夫だ。」

スターダストドラゴンの方は、ジャックの力添えもあり早い段階で回復していたのだが、遊星の方は、鬼柳の呪いによってスターダストドラゴンの守りをなくしてしまっていた為、気を受け取る受容体になれず、回復が遅れていたのだ。

「地縛神との戦いは、使命だ。それを忘れてはいない。…たとえ誰が、相手でも。」

遊星の台詞と声に、ダークグラスが身体の横に下ろしていた手を拳に握っていた。
ブルーノは、彼が5000年前の事を悔いていることを思い出す。
それと同時に、自分も決意を新たにしていた。
「大丈夫だよ。…僕らが、遊星を護るんだ。今度は、同時に2人いるんだもの。絶対に護れる!」
「もちろんだ。」


そう二人の騎士が決意していた頃、遊星は、スターダストから突拍子もない提案を受けて戸惑っていた。


「…今、何と言った?待ってくれ、スターダスト。」

「どうした、遊星。守護竜は何と言ったのだ。」
ダークグラスが、遊星を気遣う。

「…いや。スターダストは、俺がまだ万全じゃないと。」
「それは、そうだよ。今日だって、僕らの転移魔法でなきゃ、反対するところだったんだから。」
ブルーノが、遊星に手を貸して段差から降りるのを手伝うと、遊星は、びっくりしたままの顔で、ブルーノを見上げた。

「違うんだ、俺の魔力が回復の邪魔をしているから、それを手伝うと言ってきた。」
「へっ?どうやって?」
今度はブルーノが素っ頓狂な声を出して遊星の両肩に手をかけて顔を覗き込む。
「だから、それが解らないんだ。」
二人して、困った顔を見合わせていると、ダークグラスが説明をしてくれた。

「お前の身体は、100%健康な状態ならば、神に匹敵するその魔力も、自在に使いこなす事が出来るし、多少己を余剰魔力が取り巻いていても、なんら支障は無い。だが、今は容器が割れて溢れだした水が外側に氷の壁を作ってしまったような状態で、外界からの力を受け付けにくくしている。つまりは、己の魔力が障壁を作り、自然治癒を妨げているということだ。」

「そうか!だから、僕の魔法しか効かないんだね。…と言う事は、その氷の壁になっている魔力をスターダストドラゴンが何とかしてくれるってことかな。」

ブルーノの魔法は、どのような魔力障壁にも阻まれる事は無い。それが、彼の力の一片だ。

「だが、どうやって何とかするんだ…。普通は、魔力を吸収して何らかの効果をもたらすアミュレットを使う…。」
「…よね。だけどそれは、君には使えない手だよ。つけた瞬間アミュレットが粉々になるでしょう。守護竜にも意思はあると聞いているけど、スターダストドラゴンに聞いてみたら?」

遊星の魔力キャパシティに耐えうる、アミュレットのような魔道アイテムなど、通常では存在しない。神殿に納められている専用の武器防具は、耐えるどころか、遊星の魔力を急激に吸い上げて、その防御力・攻撃力を強化するという代物だ。今の遊星には、危険すぎる。
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