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kasugadotsuboの日記

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2010/07/17(土)
「#118感想&小話続き」

<つづきです。>

「空き缶・ハンガー・おもちゃの基盤・何でも使った。けれど、インジケーターやバックライトは、高級車の廃車からLEDだけ頂いていたから、あの頃の物でも結構高級品を使ってた。基盤は、設計しなおして、組みなおしてバックライト用に出力を落して、その分、明度を上げて視認性を上げる…。」

「へぇ、プチ贅沢って感じだね。半導体は、寿命がないもの。車内搭載品なら、廃材で運ばれてきていても傷みは少ないし、樹脂さえ劣化していなければ...。」

「ああ、全く問題ない。あれだけは、結構評判が良くて、かなりの台数売れたな。」
それを流用して、Dホイールや、ディスプレイ用のバックライトを作っていたらしい。
「売ってたの?」
それは逞しいサテライトの住人であるからこそで、遊星は工具も色々と揃えていた事から、
それなりに収入源を持っていたが、その一部がそれだったとは…。
「いまだったら、プレミアがつくんじゃないのかな…。」
不動遊星お手製のバックライト…。
「カスタマイズもしていた。クロウのもそうだし、昔使っていたデュエルディスクもそうだった。」
「反応速度とか、残留電力とか、基盤と電源の相性だって元のパーツが違ってたらバラバラじゃないか?それをイチイチ調整していたのかい?」
「ボリュームをつけたり、抵抗を入れたり、やり方はいろいろあるんだぞ。」

チーム太陽の面々が聴いたら、卒倒しかねない。

遊星の頭の中身は、計り知れないものがある。機械工学から、電子工学、構造物理学、一体どこまで万能なのだろう。

「要は、発想の転換ってことだよね。これは、これにしかできないっていう既成概念が、遊星には無いんだもの。」
「そうでなければ、サテライトでは生きていけなかったからな。」
そういって、なんでもないことの様に話す君。

たった数年前の話なのに、ひどく昔の様に語る。

サテライトでの遊星を知るのは、ジャックとクロウだけだろう。
そこで、どんな暮らしをしていたのか、そこでの遊星はどんなだったのか。
聞いてみたいけれど、それは聞けない気がした。

「それこそ、キングと呼ばれるジャックが、一番最初に乗ったDホイールなんて、ジャンクの塊で、空き缶のレギュレーターはもちろん、ハンガーのY字フックなんて当たり前に入っていたぞ。それが、セキュリティを振り切って、シティまでたどり着けたんだ…。
完璧主義のジャックがそこまでなりふり構っていられなかったんだと。今なら解る気がする。それに...。」

遊星は、自分の頬に走るマーカーに触れると目を閉じた。

「今、思えば、あれが始まりだったんだ…。」

ジャックが、あの試作第1号機を使ってシティに行かなければ、自分もジャックを追いかける事は無かった。

その始まりが無ければ、竜の痣も覚醒しなかっただろうし、ましてや竜の頭を継承するなんて事も無かった。

ジャックを追いかけて、決闘して、ダークシグナ―と戦って、シティとサテライトを繋いだ。

全ての始まりは、ジャンクの固まりで作った1台のDホイールだったのだ。

「どの時点で壊れたのかはジャックも教えてくれないし、どこまで持ちこたえたのかは解らない。けれど、あの機体にも
それなりの思い入れはあった。」
ジャックの話によれば、壊れてしまって廃棄されたと言う事だ。だが、それ以来、追及して聞いたわけではない。

「だからでしょう?チーム太陽の話を聞いてすぐに、助けてあげたいと思ったのは。」
ブルーノが、二コッと笑う。
「遊星は、自分が作った1号機に重ねて見てたんだね。もしも、遊星が作った子がそこに居て、走れなくなっていたら、
きっと全力で直したよね。その子にしてあげられなかった分を今日、して上げられたんだよ。僕も、イイ経験が出来たし、
前よりもっと、遊星の事が解って嬉しかった。」
遊星が、どんな思いで手製のDホイールを組み立てていたのか、ほんの少しでも垣間見る事が出来たのは、僕だけなのだから。

「そうか?」
「うん。どんなマシンでも、遊星は全力でその子にふさわしい姿を取り戻してあげる天才だってこともわかったし。」
ブルーノの言葉に、遊星が苦笑した。

「でも楽しかったよね〜。」
「ああ。割と、しっかり作ってあって、俺が最初に作ったものよりフレームなんかは頑丈に出来ていた。」

「あと、農業耕作機械のハンドルだったけ?アレ使って、アメリカンスタイルにしちゃうのも凄いよね。」
「農機具は、あまり流れてこなかったからな。盲点だったよ。参考になったな。」

もう、ジャンクの山をあさる事は無いだろうに、そんなことに思考をまわしている遊星が、楽しそうで、
ブルーノは、目を細めた。

「いい仕事をしたら、お腹がすいたでしょう。ご飯にしようか。」
実は、太郎さんに、お米貰ったんだ!と言いながら、袋を抱えてキッチンへと入っていくブルーノの背中を
遊星は見送った。

ジャック達が、新たな情報をもたらすまで、そこは確かに平和な1コマだった…。

END

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