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ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

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ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2015/03/13(金)
「100年たってようやく‥(3)」

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こんばんは。。。




“一種の学際研究”ということで、きのうの話の続きですけれども‥



賢治教信者──失礼!──賢治プロパーの人たちが反省しなければならない点としては、池澤さんも指摘しておられた

「宮澤賢治は一種の崇拝の対象になってしまって、彼の内部に読者の考えが切り込んでいかない。」

という問題があると思います。賢治を「崇拝の対象」としてできあがってしまった著書なり論文なり、それらはもう成果としてあるわけですから、いまさら否定してもしかたがないわけで、それはそれで読んでよいのですが、

これから研究なり討論をして行く過程では、もう少し広い視野を持つ必要があると思います。権威──とくに“賢治世界”の中で通用している権威──を絶対化しないことも必要ですし、

入沢康夫さんが言われているように:



 客観的に確定できることと、そうでないことを区別する



ということも大切なことです。「確定できないこと」は、それぞれが自由に論を述べてよいことになりますが、他人の論を尊重することも必要です。絶対的に「正しい」ということは、ありえない。相互の批判はあったとしても、それは単に「自分の考えは、そうではない」と言っているにすぎません。賢治も、↓こう言っている:

「それも畢竟こころのひとつの風物です」


ともかく、教団めいた世界に見えるかもしれませんが、その中では誰もが誰も“信者”であるわけではなく、宮澤賢治を崇拝しているわけでもありません。ギトンのような者もいますw



逆に、“賢治世界”の外側から切り込んでくる人たちにも、気になることがないわけではありません。
ギトンが特に気になるのは、これまでの賢治研究の分厚い成果、現在の賢治理解の水準を、この人は知らないのではないかと思うような安易な議論が、かなり多いということです。これは、“賢治世界”の側にも原因があります。内部で、“聖人崇拝”による安易で大風呂敷な議論がいままで横行してきたために、これをそのまま裏返して“賢治批判”とするような安易な議論が、外部から浴びせられるようになったのだと思います。

読者の立場で言えば、“崇拝もの”は重版を重ねていて書店で容易に手に入るけれども、まじめな研究文献は非常に入手しにくい‥‥全国の図書館に横断検索をかけて、それは石川県に行かないと無い、それは盛岡に行かないと無い、甲府に行かないと無い‥といった状態です。

ギトンは東京の近くで、国会図書館に行けるという恵まれた環境だと思いますが、それでも、国会図書館にない賢治文献は、むしろざらです。



しかし、外部から切り込む人は、みな著書を活字にできる立場の専門家ばかりなのですから、もう少しきちんと調べてから書いてほしいと思います。

例を出しますと、生前の賢治自身の思想と、後世の評価による思想(誤解ないし誇張なのですが)との混同という問題があります。たとえば、このシンポジウムでも、パネラーの坪井秀人さんの講演に、↓つぎのような部分があります:

「文学者の倫理的政治的な問題を扱う時、文学者当人の思惑や評価より、その業績がどのように受け継がれていったかということが問われなければならない。賢治神話批判とはまさにそうした受容の問題と切り離すことはできない。」

もちろん、ここで坪井氏は、宮沢賢治という作者が、自分の作品の死後における扱われ方にまで責任を負わなければならないと言っているわけではありません。ひょっとすると、賢治は、自分が発表しなかった原稿は‥発表できなかったものも含めて、死後すべて焼却されると思っていたかもしれないのです。

秋枝さんの指摘するように

「おまへの刻んだその線は
 やがてどんな重荷になって
 おまへに男らしい償ひを強ひるかわからない」

と書いているくらい、‥そういったことは過剰なほど意識していたと思うのです。



しかし、ここで突っこんで言えば、

坪井氏は「切り離すことはできない」とされますが、むしろ切り離すべきだと思います。

「賢治神話」ないしその「批判」は、生前の賢治その人とは、基本的に無関係なことだとギトンは考えます。それはどこまでも受容の問題です。そして、賢治そのものと賢治の受容とは区別しなければならない。────そのように考えたい。



しかし、のちほどご紹介するように、坪井さんは、このシンポジウムで、たいへん優れた指摘をいくつもされています。それらは、“賢治世界”の──賢治が特定のしかたで受容された世界の──外側から見ているからこそ見えてきた宮沢賢治の重要な一面なのだと思います。













ばいみ〜 ミ
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