無料ケータイHP

ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

累計アクセス:500251
ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2015/02/28(土)
「木を伐る(1)」

.
こんばんは。。。





大江健三郎の小説に、木を伐る‥だったか、木が伐られただったか、そういう題名のがあったような気がするのですが‥たしか、故郷の愛媛県ものの一つでした‥

しかし、いまこれを持ち出したのは、宮沢賢治の場合の「木を伐る」の話をしたいからで‥ そのモチーフが持っている象徴的意味いかんということです。



秋枝さんが、《熱した》時代精神に関わる《生命》モチーフの一つとして、これを取り上げているのは卓見だと思いました。それで、【第8章】では全面的に秋枝説を取り入れています。

しかし、このモチーフは、【第4章】の「電車」という短い詩にも出ていて、この詩がまた、ふつうにそのまま読んだのでは何のことかわからない判じ物なんですね。。。



「なあに、山火事でござんせう」
「なあに、山火事でござんせう」
「あんまりおほきござんすから」
「はてな、向ふの光るあれは雲ですな」
「木きってゐますな」
「いいえ、やっぱり山火事でござんしょう」


こんな変な会話みたいなものが出てきます。


これにも秋枝説を適用しますと、たしかに一応すじは読めてきます。【第4章】といえば、まだ《熱い》時代の真っ只中、しかも、「ひのきのひらめく六月」です(!) 「山火事」つまり、燃え立つ生命のイメージのほうが勝っていて、《木を伐る》は、ちょっと出てきて、すぐ引っ込んでしまいます。。。



ただ、じつはこれが唯一の読み方じゃないんです。

この「電車」は、花巻電気株式会社が、豊沢川流域開発の一環として設けたものです。松原ダムの余剰電力を利用しています。つまり、地元資本によるミニ開発です。地元資本とは、その実体は《宮澤閥》。。。。そして‥、まもなく、この会社自体が盛岡電気に買収されて(のちにはその全体が東北電力に合併‥)、‥おそらく、より大きな資本化連合の下請けのように、地元資本がなって行く過程で、豊沢川とは向かい合う形の台川流域に、花巻温泉が立ち上がります。宮沢賢治も‥、温泉開発に就職した教え子の要請に答えるという迂回した形でですが、温泉地の花壇設計に動員されることになります‥ 賢治自身には、そうした一切の仕組みがよく見えていたし、見えていたから面白くなかったフシがあります。しかし、その構図の中での自分の立場を受け入れて、そこに心血を注ぐという方向に行ったわけです。


ところで、れいの関徳弥氏が、《宮澤閥》の中心というべき宮沢直治──賢治の母方のおじいさんですが──について、

小作人には下肥もタダでは遣らなかった。借金を頼まれれば喜んで貸した(※)。いくらでも貸してやって、返せないと、山や田畑を取った。こうして、おじいさんがお世話になった小作人たちに、恩返しのために、賢治は無料で肥料設計をしたりして奔走したのだ。。。

こう書いているのです。

(※)ここが、賢治の父・政次郎氏との大きな違いです。覚えているでしょうか?賢治が父の質屋の店番をしていたときに、質物を預けに来た人の望むだけたくさん貸して、政次郎氏にひどく叱られたという逸話。あれはふつう、質物の価値に対して多すぎる金を貸したので、それでは商売にならないと言って怒られた、ということになっていますが‥、別の見方もできるのでは?‥政次郎氏は、借主が返せなくなるほどたくさん貸したことを批判したのではないか?つまり、今で言うサラ金の過剰貸付です。返せなければ、利子だけ払わせて、借り換えにさせて借金をふくらます、そして、さらに質物を持ってこさせる、あるいは、まとまった額になったら田畑を担保に取る。賢治がそういう方向へ行こうとしているのを抑えたのかもしれない。そう考えると、いっさいの構図は全くひっくりかえるでしょう。そして、それが真実なのかもしれません。。。











ばいみ〜 ミ
.

Image

ログイン


無料ケータイHP


FC2無料ケータイHP