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こんばんは｡｡｡


菅原千恵子さんが、角川文庫の「あとがき」に、↓こんなことを書いておられました：


「私のこの作品を読まれた方の中には、保阪嘉内一色で論が進められていることに対して不満や疑問を持たれた方もいらしたであろうし、また、嘉内が大きく見えるのに対して賢治がひどく小さく感じられて、大いに失望したという言葉も聞こえてきそうである。

　しかし、私たちが思い描いている途方もなく大きな賢治とはいったいどの時期のどの作品を読んだ時からイメージされるようになったのだろうか。〔…〕言うまでもない。それは、大正十年、保阪家内との訣別以降とはっきり断言できる。その年を境にして賢治も作品も確実に変容しているのだ。賢治の言葉を借りれば『氷のかけらをくぐってきた』ための変化であった。

　〔…〕傷つくことを恐れるあまり適当にかわして生きることに慣れてしまっている現代の私たちには、その友情を求めていくことの激しさや妥協しない一途さを見て息を呑む。そしてその苦悩の深さが、賢治とその作品を変えていったのだとやがて納得する。〔…〕誰にも語れぬ悩みを胸に秘めて、その孤独の中に人生を生き抜いた時、彼の作品は変容しみごとに昇華したのである。」（『宮沢賢治の青春 “ただ一人の友”保阪嘉内をめぐって』「あとがき」）


これを読んで、やっと分かったんですね｡｡｡ 賢治の保阪宛て書簡を公表し、ふたりの“訣別”説を論じた賢治研究家たちが研究界でもてはやされたのに、菅原さんの論文は、研究者の世界から無視されて今日に至っている理由｡｡｡（研究者以外の一般読者の世界では逆だというのに‥）また、保阪庸夫さん（保阪嘉内次男）が、嘉内宛て書簡の扱いについて、編者に対しても筑摩書房に対しても強い不満を持っておられる理由が｡｡｡ 菅原さん以外にとっては、あくまでも宮沢賢治が中心であって、保阪嘉内はサシミのツマでしかない。

どうも‥日本の文学界には異様な権威主義がはびこっているようです。宮沢賢治以外の“文豪”について言えば、“文豪”と交友を持った人も、やはり文学者か、そうでなければ大学出の‥ひとかどの人物ばかりなのですよ｡｡｡ ところが、宮沢賢治が親しくしていたのは、草野心平と金田一京助を除けば、みな、ふつうの人なんですよ。宮沢賢治だけが掬い上げられて特別視される。ほかはみんなゴミにされてしまう｡｡｡ そういう異常な構図があるんじゃないでしょうかね‥ｗ

しかし、保阪について言えば、文豪だろうと偉人だろうと、恋人同士は対等ですよ。年の差も性別も関係ない‥それが恋愛というものです。

そういう愛の愛たる基礎条件を、菅原さんだけが理解していた。ほかの大研究家たちは、文学を語りながら愛の何たるかも分かっていなかった｡｡｡ そういうことなんですね（まる）




加えて言えば、賢治⇔嘉内に限りませんが、文通書簡は往復両方を読まなければ、ほんとうのところは分からないです。

ところが、なぜか、宮沢賢治だけは賢治の書簡だけが公表されていて、賢治が受け取ったほうの手紙は公表されたためしがない｡｡｡ いったいなぜなんでしょうね。

トシの賢治宛て書簡だけは、一度まとめて雑誌に掲載されましたが、これも全集には収録されなかったし、全集以外でも収録した本はありません。


自分の書いた書簡の下書きまで残していた賢治が、人からもらった書簡は全部捨てていたとは思えないんですよね｡｡｡



保阪の書簡も、《アザリア》同人の河本義行に宛てたものは、河本家と周りの人たちが本にして出しています。同人の小菅健吉に宛てたものは｡｡｡ これ、あくまで伝聞なんですが、花巻に宮沢賢治記念館ができた時に、小菅（まだ生きていた）は所持していた関係資料を全部郵送して寄贈したと言うんです（小菅遺族の証言）。‥これは信憑性があるかもしれない。というのは、小菅が所持していた《アザリア》が、その後（どういうルートでかは分からないが）、『校本宮沢賢治全集』に収録されているからです。小菅が所持冊に記入していた記号まで、誤って掲載され、それが『新校本全集』で訂正されているので、小菅所持本だということが分かるのです。

ところが、最近、氏家市の博物館で小菅と宮沢賢治関係の特別展を開こうとして、記念館に問い合わせたところ：

　当館には、そのような資料はいっさいありません。

という返事だけが返ってきたと言うんですね｡｡｡




関係者と人的なつながりを持たないことをモットーにしているギトンのような者には、これ以上のことは分からないし、想像もできませんが‥

まあ、奇怪な世界は、賢治が覗いた“異界”だけではなかったようです｡｡｡







ばいみ〜　ミ彡
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