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ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

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ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2013/04/25(木)
「鋼青の空(3)」

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http://id43.fm-p.jp/530/giton/index.php?module=viewbk&action=ppg&stid=1&bkid=990474&pgno=11&bkrow=0
「ヘングスト」は、ドイツ語で牡馬のことですが☆
、辞書を見ると、「女を追いかける男」という隠語にもなっています。

☆(注) ドイツ語では、一般的に馬を表わす Pherd のほかに、去勢していない牡馬(つまり種馬) Hengst, 去勢した雄馬 Wallach, 牝馬 Stute, 仔馬 Fohlen とそれぞれ呼び名があります。

ともかく、賢治は、脚光を浴びて活躍していたハクニーが、落ちぶれて目に涙をためている、その気の毒なありさまを描いて、

「ぜんたい馬の眼のなかには複雑なレンズがあつて
 けしきやみんなへんにうるんでいびつにみえる」

と書いています。零落して僻んだ馬の心象には、周りのものはみな、ひずんだ形にしか見えない──逆に言うと、作者のほうから見て、馬の目つきは「へんにうるん」だ悲しげな目に見えるというのです。
そして、「馬車挽き」が遠くで腰掛けてやすんでいる間に馬が勝手に動き出したのは、かつての栄光を思い出してハクニー歩様であゆんでみたのだ──と文字にして書いてはいませんが、そう思いたくなるような濃い同情を寄せて描いているのです。

「……………………
 陰氣にあたまを下げてゐられると
 おれはまつたくたまらないのだ
 威勢よく桃いろの舌をかみふつと鼻を鳴らせ」

という部分に、‘単なる荷馬車の挽き馬’という現在の零落した地位を踰越して歩き出そうとする老馬の気持ちが現れています。

http://id43.fm-p.jp/530/giton/index.php?module=viewbk&action=ppg&stid=1&bkid=990474&pgno=12&bkrow=0
「蜂凾(はちばこ)の白ペンキ」(第66行)は、蜂の巣が中にある養蜂の箱ですが、白い箱が光っている様子は《忘却》を象徴しています。「なにか忘れものでももつてくるといふ風」に繋がるものですが、忘却の彼方にある記憶を手繰り寄せようとしているのは、老牡馬でしょうか。

67櫻の木には天狗巣病がたくさんある
 天狗巣ははやくも青い葉をだし
 馬車のラツパがきこえてくれば
70ここが一ぺんにスヰツツルになる
 遠くでは鷹がそらを截つてゐるし
 からまつの芽はネクタイピンにほしいくらゐだし
 いま向ふの並樹をくらつと青く走つて行つたのは
74(騎手はわらひ)赤銅(しやくどう)の人馬の徽章だ

「天狗巣病」は、樹木の病気で、小枝が異常に繁殖して、箒や鞠のかたちの塊ができてしまいます。また、花が咲かなくなるなどの症状を伴います。
桜の天狗巣病は、タフリナというカビの一種がついて樹木がホルモン異常を起こすことによります。
ソメイヨシノ桜は、葉が出る前に花が咲くので、花の満開が盛大に見えるのですが、
天狗巣病の病巣は、花が咲かないで葉が出てしまうので、満開した桜の木のなかで、そこだけが黒っぽい塊に見えます:http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle/?no=151
賢治は、天狗巣病の枝に近づいて観察し、葉が出ているのを看取していますね。
(つづく)
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