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ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

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ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2012/07/07(土)
「悲しき天気輪(3)」

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http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=71

スケッチ「丘陵地」に移ります。

五輪峠を越えて、北上平野の側に下りて来ると
道は谷沿いになって、
ヒバ囲いのある家々☆が密集し、
渓川の水が溜まってごぼごぼ溢れている所もあります。
地元の研究会の方の考察によると、この風景は、五輪峠から下りてきて最初の集落〈北新田〉を過ぎ、〈上大内沢〉に入ったあたりの状況と合うそうです:http://www.kenji-kaido.jp/hitokabe/index.html http://c.fc2.com/m.php?_mfc2s=3953&_mfc2u=http%3A%2F%2Fwww.kenji-kaido.jp%2Fhitokabe%2Findex.html
したがって
生徒の実家があるのは、〈上大内沢〉ではないかと推定されるわけです。

☆(注) スケッチ「丘陵地」には、「ひのきのなかの/あっちのうち…こっちのうち」と書かれていますが、
4月6日のスケッチ「山火」では「ひばやねずこ」となっています。ヒバはヒノキとよく似ているので、生垣のヒバを遠くから見てヒノキだと思ったことは有りえます。http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=83

「集塊岩」は、火山弾・火山礫などの火山岩の塊が、溶岩や火山灰で固着してできた岩石で、安山岩質の火山でできると「安山集塊岩」になります。
http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=75
含まれている火山弾などがゴツゴツと飛び出た崖になりやすく、風化しても岩混じりの火山灰土になりますから、耕すにはやっかいな痩せた土地と云えるでしょう。
山峡の村で、棚田が多く、雑木林のマツやコナラも、地面が岩がちで根が深く入らないので、ひょろひょろした感じになっているかもしれません。

「木を植える場処や何かも決めるから…」
と、生徒の実家の造園の相談をしているようですが、
賢治が奨める樹種は、ドイツトウヒ、ヤマナラシ、バンクス松、白樺、アンズ、…
ドイツトウヒとバンクス松(米国原産)は、寒さに強いので気候条件には適しているのですが…
山村の家に、こんな舶来ものをわざわざ取り寄せて植えるのかな?…という感じもします。
しゃれた庭を造って、「糸織り」の「部落の主(ぬし)」をあっと言わせてやろうという悪戯心が感じられますね。
生徒は(おそらく)あっけにとられているので、賢治は
「さう云ふふうにしてきれいにこさえとかないと
 なかなかいいお嫁さんになど行かないよ」
と からかっていますが、
「お嫁さん」と言われて、生徒の顔は「ストウブのやうに赤くなって」しまいます。
未経験で純真な男の子なのでしょうね^^

しかし、賢治も
「いいお嫁さんなどは来ないよ」と言うべきところを、「いいお嫁さんになど行かないよ」という言い方になってしまっていて、その生徒に対する下心を覗かせているんではないでしょうかw

<上大内沢>部落のはずれで犬に吠えられ、しかも部落の子どもたちは、吠える犬を囃し立てているようすです。
犬に吠えられるというのは、かつて、保阪との付き合いの中で、保阪と歩いていると路傍の犬が賢治に激しく吠えかけたという体験が印象に残っているようです★

★(注) 菅原千恵子『宮沢賢治の青春』pp.60,132-135.

しかし、この犬に賢治は、「ははあ きみは日本犬ですね」などと話しかけたりして楽しそうです。

さきほどの「ごろごろ鳴ってゐる」淵の水音も、…童話「どんぐりと山猫」にも出て来ますが…、楽しげな風景として描かれているのだと思います。

「いつころ行けばいゝかなあ/ぼくの都合は/まあ/四月の十日ころまでだ」と言っていますが、
賢治は、生徒と再会の約束をして別れたのでしょう。

「……どうだ雲が地平線にすれすれで
   そこに一条(ひとすじ) 白金環さへできてゐる」

この「白金環」は、ちょっと不可解ですが☆☆
エンゲージリングを想像しているのではないかと思います。
(つづく)

☆☆(注) 科学用語を調べてみた限りでは、液体の表面張力を測定する器械が、「白金環」を液面に触れさせて、液面が環を引張る力を測定するしくみになっています。
しかし、『春と修羅(第1集)』所収の「樺太鉄道」(54番)には
  ……………………
 (雲はさつきからゆつくり流れてゐる)
 日さへまもなくかくされる
 かくされる前には感応により
 かくされた后には威神力により
 まばゆい白金環(はくきんくわん)ができるのだ
   (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
 たしかに日はいま羊毛の雲にはいらうとして
  ……………………
というくだりがあって、
「白金環」は、太陽の近くにある薄い雲にできた暈(かさ)や太陽を隠している薄雲のハレーションを言っているようです。
低く降りた雲のヘリと地平の間で、同じような現象が見えたのではないでしょうか。
http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=75
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