無料ケータイHP

ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

累計アクセス:499643
ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2012/07/05(木)
「悲しき天気輪(2)」

.
それはともかく、「五輪峠」の最初のスケッチ〔A〕【下書稿(1)】に戻ると、
http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=71

木の間に見え隠れする暗い霙空を仰ぎながら、冬でも光の届かない檜林☆の林床を経廻って行き、
林の陰にひっそりと立っている苔だらけの古い五輪塔★を見つけたさまがよく分かります。

「五つの峯の峠ゆゑ
 五輪峠と呼ばれたり」

「たり」は「〜したり〜したり」の「たり」ではなく、文語の完了助動詞(呼バレテイル)です。
http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=84
地図Cを見ると、(※)のニセ峠と五輪峠を取り巻いて、5,6個の小さな峰が並んでいて、まさに賢治のスケッチのとおりです。
生徒は、「糸織り」の地主のことなど、卒業して部落に戻ってからの生活が憂鬱なことを零していますが、
賢治は、「五輪」(古代インドの5大元素)の話などをして、はるかな天空へ気持ちを広げていこうとしています★
ひっそりした風景の中を二人だけで歩いているせいでしょうか、
賢治と生徒の気持ちはぴったりと合っているようで──それが、詩の静かな調子から伺われます。

☆(注) 地図Cに針葉樹の記号がありますが、こうした場所では、ヒノキの植林と断定して、まず間違いないです ←山歩きの経験者ww
★(注) 「花崗岩(みかげ)の古い五輪の塔だ」http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=74

〔B〕【下書稿(1)手入れ】に進むと、http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=71

現代の自然科学で云うエネルギーは、5大元素「地・水・火・風・空」の中では「火」に含まれていて、賢治自身も、その生徒も「火」だと言っているのがおもしろいですね。

「そして運動のエネルギーと
 熱と電気は火に入れる
 それからわたくしもそれだ
 この楢の木を引き裂けるといってゐる
 村のこどももそれで
 わたくしであり彼であり
 雲であり岩であるのは
 たゞ因縁であるといふ
  ………………
 さう考えると
 なんだか心がぼうとなる」

過去から一定の「因縁」があって、各元素の配合や運動方向がこのようになっているために、これは《ぼく》で、これは《きみ》に、たまたまなっているけれども、
本質的な区別はないのだ…という哲学が語られます。

しかし、峠に出て、広くて暗い☆☆北上平野を眺めた後は、いささか状況が変わります:

「「あ何だあいつは」
 「ああ野原だなあ」
 いま前に展く暗いものは
 まさしく早春の北上の平野である
       二の水輪を転ずればだめ
       三の火輪を転ずればだめ
       みんな転ずればおかしいな
       大でたらめだ」

☆☆(注) 雪国では、早春の野山の風景の「暗さ」は、喜ばしい明るさでもあるのです。「暗い」のは、雪が減って、濡れた地面や樹肌が現れているということだからです。

生徒が、賢治の哲学めいた話を茶化したのかもしれません。
「海と湛(たた)える藍と銀との平野」を眺めた賢治は、空想の世界から地上に引き戻されたように、
生徒の部落の話に、話題を変えています⇒ここで、次のスケッチ「丘陵地」に移りましょう★★
(つづく)


★★(注) スケッチ「五輪峠」の終り近くにある「こなら」と「温石いし」については⇒http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=74
「温石(おんじゃく)」は、むかし、焼いた石を布などに包んで、カイロのようにして使ったもので、現在でも治療用として使われます。ミネラルの豊富な黒い石のほうが、治療効果が高いと思われているようです。
.

Image

ログイン


無料ケータイHP


FC2無料ケータイHP