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ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

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ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2012/01/22(日)
「夜明けの星(5)」

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賢治の詩「暁穹への嫉妬」
の最終回です

http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=30


詩の題名「暁穹への嫉妬」は、「ぼく」が美しく気高い「あけがたのそら」に対して嫉妬しているという意味ですが
それが、現実の経験としての失恋を投影していると見ることは可能だと思われます
例えば、賢治が思いを寄せた女性が、賢治自身尊敬するような立派な相手と婚約した──といった事態も想像できるかもしれません

ただ、現在残された資料から当時実際にあったことを解明するのは、極めて難しいと思われます

いずれにせよ
この詩で、「ぼく」は「サファイア風の惑星」に対して、恋愛感情で惹かれており
「あけがたのそら」に対しては、嫉妬と戸惑いを覚えています
そして、「惑星」が「そら」に溶かされつつある事態を悲しみ「どうしていゝかわからなくなる」…
「惑星」は、進んで「そら」に溶けて行くようにさえ見えるのですが
「ぼく」賢治の目には


 滅びる鳥の種族のやうに
 星はもいちどひるがへる


という、やりきれない悲惨さ、自分の無力さにうちひしがれるほどの悲劇に思われるのです


ところで、…ここでちょっと気になることがあります

それは、賢治の「嫉妬」の相手、「恋敵」のイメージです。「薔薇輝石」の紫紅色、「ひかり気高く輝」く…これは果たして男性のイメージでしょうか?むしろ女性的すぎなくはないでしょうか?
「あやしく澄んだ」青い「サファイア風の惑星」のほうが、よほど男性的…凛々しい少年のイメージではないか?

「サファイア風の惑星」を、賢治が想いを寄せた男性
「あけがたのそら」への溶解を、彼の婚姻
と見ると、この詩はたしかによく理解できます

あるいは

「滅びる鳥の種族のやうに…ひるがへる」という「鳥」のイメージは
死者の魂が死後の世界との間を行き来する姿(その背景には東北の古い民間信仰があるようです)として、賢治の作品にはしばしば登場します

つまり、ここでの賢治の気持ちは、亡くなった妹への痛恨とも重なっているのです


そして、賢治の実生活との関係はともかく

生死を隔ててさかれるにも等しい同性的な相手への痛恨と恋情
──という、のちの「銀河鉄道」へと繋がるテーマは
すでにこのあたりに萌芽しているのかもしれません。
(完)
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