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ギトンのあ-いえばこ-ゆ-記(旧)

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ここは、2015.3.10.までの過去日記倉庫です。

2012/01/19(木)
「夜明けの星(2)」

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こんばんは

賢治の詩「暁穹への嫉妬」
のつづきです

http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=30


 薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、
 ひかりけだかくかゞやきながら
 その清麗なサファイア風の惑星を
 溶かさうとするあけがたのそら


「薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、光り気高くかゞや」いているのは、「あけがたのそら」です。「サファイア風の惑星」ではありません
薔薇輝石は、の写真を見てください
http://blog.crooz.jp/gitonszimmer2/ShowArticle?no=29

紫紅色を帯びたマンガン塩の薔薇輝石が、明け始めた夜空の色を表しています。「エッセンスを集め」「光り気高く輝」くという表現は、なにか高貴な存在を思わせます

これに対して、サファイアは深い藍色の宝石で、清く澄んだ神秘的な色です

高貴な存在である「あけがたのそら」が次第に明るさを増しながら
「サファイア風の惑星」を「溶かさうと」しているというのです

夜明けが始まるまでは、その星は、まだ暗い低空(「天の水底」)で頻りに瞬いていました:


 星はあやしく澄みわたり
 過冷な天の水そこで
 青い合図(wink)をいくたびいくつも投げてゐた


「いくたびいくつも」という重ねた表現が、その「惑星」に対する賢治の関心を示しています
「過冷」「過冷却」は、賢治の詩にしばしば現れる表現です。ちょっと衝撃を加えられただけで、何か形のある感情や考えが心の中に結晶してしまう前の、一触即発の危うい状態をいうのでしょうか

「青い合図」も、不思議な表現です。この詩のべつの習作では、この部分は


 あんまり青くあやしく澄んで
 ぼくを誘惑しないといゝんだ


となっていました
後に「暁穹への嫉妬」を文語詩に改作した「敗れし少年の歌へる」の2つの習作形では:


 さながらきみのことばもて
 われをこととひ燃えけるを

 さながらきみのことばもて
 われに光を送りしか


となっています
賢治がこの夜明け空の「惑星」に、恋愛感情を伴う誰かを投影していることは間違いないようです
じっさい、「暁穹への嫉妬」には、「ぼくがあいつを恋するために…」とか、恋を諦めるよう説得されると、「ぼくはどうしていゝかわからなくなる」などと書かれているのです
(つづく)
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